9. 失禁については,どのような介護法があるでしょうか?

PSP患者の多くは,いずれは排尿や排便のコントロールが困難になるようです。ここで少なくとも2つの問題が発生します。ひとつは,膀胱を完全に空にすることができなくなること,もうひとつは尿が頻繁になり,しかもまさにそのときまで尿意を感じない,ということなのです。医師は尿をコントロールする助けとなるような,何らかの薬を処方してくれることもできるでしょうが,時間とともに悪化は続いてやがて効かなくなるものです。
ディペンズ高吸収性ブリーフというのがあり(*1),腰まわりに伸び縮みするひもを使ったもので,よく使われるつり帯のついている(sling affair)の種類です。ベッドは,マットレスをジッパーのついた樹脂製のカバーで包み,大きなタオルを半分にたたんで患者の寝る部分に敷き,その上にシーツや普通のベッドカバーをするとよいです。シーツはたぶん毎日交換して洗うことになるでしょうが,タオルがブリーフから漏れた水分を吸収してくれます。また,いろいろな形のカテーテルが入手できます。コンドームカテーテル(*2)は多くの男性に有用ですが,動きに合わなかったり不快であったりと,使えない方もいます。これはベッドや車椅子に下げた袋にチューブをつなぐものです。恥骨上カテーテル(*3)は,手術によって挿入するものです。ディペンズのブリーフは,すべての患者に有用なものではありません。

「彼のためにディペンズを試したのですが,あいにくいつも車椅子に乗っている彼には,座るとき非常に不快であることがわかりました。彼は食べ物用のチューブとフォーリーカテーテル(*4)をつけていたので,洋服は着せず,病院のガウンを着せていました。そこで,私はただ彼にプラスチックで裏打ちされた吸収性パッド(chucks pad = chux pad *5)を着けて,排便を止めるだけにしていました。私が彼をホイヤーリフトで運ぶときは,そういったパッドなどはみんな一緒で,私は彼をベッドの上に寝かせて,寝返りを打たせて体を拭いたりしました。彼が常にカテーテルを挿入しているようになる前には,夜にはコンドームカテーテルを使うことでベッドを濡らすことを防げましたが,これは昼間に使うことはできませんでした。」

失禁用品の業者もあります(*6)。失禁用品の品物は無地の茶色い箱に入れられて,家庭に直接配達されます。問い合わせ先は,Home Delivery of Incontinent Supplies (800) 538-1036 http://www.hdis.com/

「私たちは,前立腺や他の失禁を起こす原因を泌尿器科のお医者さんに総合的に診断してもらい,泌尿器科医により失禁に関して訓練された看護婦からも役に立つ診断を受けました。ホームヘルス・エージェンシーにも失禁の専門家がいますし,医者から要請してもらって家庭訪問をしてもらうこともできます。わたしたちはコンドームカテーテルを試しましたし,恥骨上カテーテルやフォーリーカテーテルも考えてみて,結局ディペンズの(少なくとも最良のブランドの)sling-type briefsを昼間は使い,夜はそれに加えてthe full Depends briefs over the sling-type(*)を使いました。夜にはまだ少し漏れることがあったのでベッドのシーツは毎日替えていましたが,ともあれ,これが最善の方法でした。彼はよく身体を大きく動かすので,どのカテーテルも使えませんでしたし,重力利用供給装置(gravity feed)や整位のため,あるいはチューブを椅子に引っかけたりするため,(カテーテルの蓄尿用)バッグは,電動式移動用/背もたれ椅子を使うのには向いていませんでした(これらはみな彼の動きが大きいことによるのですが)。私たちはトイレのスケジュールを決め,毎日気をつけて2000cc(およそ2クォート)の排尿をするようにしました。彼をだいたい60~90分ごとにトイレに連れて行ったので,粗相はめったにありませんでした。ディペンズはそういう場合たいてい役に立って,何かあるとすればトイレに行けないとき(車で老人デイセンターから家に帰るとき)にたくさんもらして,服を濡らしてしまうといったくらいでした。私たちは肌の手入れにも注意しており,シャワーをほぼ毎日するなどしていたのはよいことでした。私たちは尿瓶も使っていました。これは彼がトイレできちんと便器に向けて用をたすことができなかったからです。」
訳注

*1)ディペンズのサイトはこちら(英語) http://www.depend.com/
男性用の紙おむつの写真はこちら http://www.depend.com/products/products_male.asp
上記に出てくる「ディペンズ高吸収性ブリーフ」は,Extra absorbencyと思われます。下記に出てくる「the full Depends briefs over the sling-type」はOvernight Fitted Briefsと思われます。
つり帯のついている紙おむつとは,「リブドゥリフレ はきかえ簡単ベルトパンツ」のようなもの?http://www.rakuten.co.jp/harvest/450554/450851/

*2,3,4)ここに出てくるカテーテルは泌尿器系カテーテルのことです。 http://www2.ocn.ne.jp/~mrc/iryou.htm
コンドーム型カテーテル。英語のサイトに模式図がありました。 http://www.medexusdaisy.com/demolink/demo3.html
恥骨上カテーテル(手術を要する)。癌のために膀胱瘻造設術を受けられた方がご自身の体験をもとに情報を発信しているサイトに写真があります。 http://www9.plala.or.jp/rikurou/VesicalFistualBasic.html
フォーリーカテーテルの写真 http://homepage1.nifty.com/fmca/jigyou/koubai/topics_back/02_07/cliny/c-03.html

*5)プラスチックで裏打ちされた吸収性パッドの先駆けは,Kendall社の Chux pad だったそうです。Kendall社のサイトを見にいったところ,現在はChux という商標の製品はないようです。日本では「安心パッド」とか「尿とりパッド」などと呼ばれています。たとえばエリエール社やリブドゥコーポレーションの製品があります。
Kendall社 http://www.kendallhq.com/
エリエール社 http://www.elleair.co.jp/takecare/lineup/domestic/08/
リブドゥコーポレーション社 http://www.livedo.jp/

*6)日本にも家庭に直接配達してくれる会社があります。たとえば,http://www.wing-kaigo.co.jp/index.htm

(2000.3.9作成,2004.12.29更新)