12.危険な行動を避けるのを忘れてしまう患者とどうつきあったらよいでしょうか?
すなわち,階段を通り抜けようとする,ものを拾おうとかがむ,重たいものを動かそうとするなどの行動です。
根気よく,そして用心深く患者さんを見守ってください。さまざまな理由で,PSPの患者さんはかつては普通にしていたことが,今は危険であることを,覚えていることができないようです。注意すれば納得するように見えるのですが,ほんの数分でもとに戻ってしまいます。
「1年の間,夫にはとても手を焼きました。私にできたのは,夫を拘束するか,それとも見守るか,という選択でした。私は見守るほうを選んだのですが,たとえば私がお風呂に入っているときなどは,夫を拘束するのでなければ,彼が怪我をするか,死ぬようなことになっていたでしょう。脅してもすかしても,誰にも彼を従わせることはできませんでした。私は,彼が何も理解していないか,さもなければ彼の心がすぐにあらぬほうへ行ってしまうため,忘れてしまうんだと考えています。ともかく,彼が何を約束しようと,すぐさまそれを無視してしまうんです。」
常に注意していることは必要ですが,最終的には「なるようになる」と考えるようになってきます。いつも見張られていたり,拘束されているというのは誰にとってもいやなものだし,どの方法をとるかは,それぞれの患者さんの状況によっても違ってくるでしょう。
(2002.3.9作成)